アカデミー賞を席巻するメキシコ出身の映画人たち。国を越え、人種を超え、なぜ彼らは光り輝くのか。映画界のトップランナーを輩出するメキシカン・パワーの原点を探る。

メキシコの映画監督たちがハリウッド映画を席巻している。映画の祭典アカデミー賞で、2014年から2018年で3人のメキシコ人監督が4度も栄冠に輝いた。『ゼロ・グラビティ』で監督賞と編集賞を受賞したアルフォンソ・キュアロン。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で監督賞と脚本賞、『レヴェナント:蘇えりし者』で2年連続で監督賞を受賞したアレハンドロ・G・イニャリトゥ。そして4冠となった『シェイプ・オブ・ウォーター』で監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロの3人。彼らは“移民”としてアメリカにやって来たメキシコ人。厳しい移民政策が敷かれるトランプ政権下で人種差別の嵐が吹き荒れる今、「越境者」の作る映画がなぜオスカーを独占できるのか?なぜメキシコから巨匠が生まれ続けるのか?
1980年代、メキシコ映画界は氷河期といわれていた。映画は政府の検閲に阻まれ撮りたい映画を撮ることができず、未来が見えない最悪の時代を過ごしていた3人。映画だけは世界を変えられると信じ、それぞれがもがき続けていた。その後、低迷するメキシコ映画界に光をともしたといわれるある映画で3人は出会い、周囲の映画人たちと刺激し合いながら逆境を乗り越えようと伝説の作品を撮り上げた。3人は、いつしかスリーアミーゴスと呼ばれるようになる。移民として国境を越え、アカデミー賞の栄誉に輝いた越境者たちの躍進の原点に迫る。