黒澤映画『生きものの記録』の音楽を創作中急逝した早坂を黒澤は惜しみ、その喪失感は長く黒澤の中に跡を遺した。仕事上ばかりでなく、芸術全般に対する考え方、生活者として、早坂と黒澤のあいだには、他人の容喙(ようかい)を許さない「友情」が結ばれていた。7年間、計8本に及ぶ早坂と黒澤の映画づくり、それは日本の映画音楽黎明期を駆け抜けた日々でもあった。 テレビ初公開となる黒澤映画に携わった時の早坂の日記帳、作曲ノート、音楽コンテといった資料、『七人の侍』録音時の“幻”の6ミリテープを通して、音楽家・早坂文雄の実像に迫り、映画史上の傑作となった『七人の侍』が誕生した時間へとご案内する。黒澤明と早坂文雄という偉大な芸術家同士の一瞬の火花のような交流・命がけの「友情」の姿を明らかにする。