前編
アパートの1室で大量のゲームソフトに囲まれて暮らす男がいる…
部屋はおろか、廊下や台所に積み上げられたゲームソフト。残された1畳ほどの空間で寝るか食べるかゲームをするか。そんな日々をもう何十年続けただろうか。集めたゲームソフトは約3万本。レアなゲームは衝動買い、そのため、お金はなく借金は絶えない。

男の名は藤田真也。45歳・独身。もうひとつの顔は「ゲーム芸人・フジタ」だ。幼い頃から没頭してきたゲームの腕でファンを魅了する。だが、華麗な技の裏側には、彼の悲し過ぎる生い立ちが深く関わっていた。

それは、フジタが小学校入学直前のこと。母親がクモ膜下出血で突然、この世を去り、フジタは父親と2人で暮らすことに。しかし、その父が家に帰らなくなる。父はフジタの同級生の母、シングルマザーの女性と恋仲になってしまっていたのだ。小学2年生で始まった一戸建てでの「独り暮らし」。自分をこんな目に遭わせる父を憎み、その苦しさと寂しさを紛らわすために、フジタはゲームに熱中してきた。それから約35年…

2021年の正月、フジタを突然、呼び出した父親は83歳になっていた。「自分が死んだら全財産をお前に遺す」と言い、遺言状を書きたいと言い出したのだ。そして、その直後から、父親に異変が起きる。それは、認知症の始まりだった…

ひたすら父を憎み、孤独を生きてきた芸人と父親の再会。フジタを待ち受けていたものとは…

後編
「なぜ、自分を捨てたのか?」…長年の怒りをぶつけたいフジタだったが、父の様子がおかしい…診断の結果は「認知症」。そして病は生活に影を落とし始める。カードローンのキャッシングで膨らんでいく借金。スーパーに行けば「買い物したモノを盗まれた」と主張。防犯カメラを確認したところ、父が買い物をした形跡自体がなかった。支給されてもすぐに底を突いてしまう年金。挙げ句の果てに父は「息子が年金を盗んでいる」と思い込んでしまう…しかし、父はどんなに生活に困っても、内縁の妻に渡す「月末の3万円」だけは忘れない。フジタに金を借りてまで、女性に会いに行こうとする父。ずっと憎んできた2人のために、金を渡すことになるとは…フジタの心は大きく揺れていた。

ひたすら父を憎み、孤独を生きてきた芸人・フジタ。父を問いただすつもりが、病気によって、またしても父に振り回される日々。「せめて記憶があるうちに…」父と息子は、数十年ぶりの旅に出る…